hopperのメモ帳

勉強などする途中でのメモを置いてます。

【翻訳記事】ニューロダイバーシティ(神経多様性)についてあなたに知ってほしいこと

しばらく前にTwitterで見かけたこちらの動画の内容を、翻訳してご紹介します。
話者はアメリカの心理学者Devon MacEachronさん(Twitterアカウントもあった)
nowthisnews.com

自閉症ADHDのような神経学的な違いは、心の健康に関する医療モデルでは、機能不全や障害と考えられています。そうした神経学的に異なる精神を持つ人々が、自分自身として受け入れられるようにすることには、ほとんど関心が払われていません。
そうした人たちの強みを発見し、祝うことも。
そしてその違いを価値あるものと見る場所をこの社会の中に見いだすことも、関心が払われていません。

私たちが多様性ということを考えるときら多くの人は人種や性的志向を思い浮かべるでしょう。
でも、あなたがまだ知らないかもしれない別の種類の多様性があります。それがニューロダイバーシティ(神経多様性)です。
ニューロダイバーシティとは、人々の間にある神経学的なちがいをもっと認識し、敬意を払っていこうという考えです。

今こそ、この新しい社会運動、ニューロダイバーシティが発進する時だと私は信じています。
アメリカでは2~17歳の子どもの610万人がADHDと診断されています。そして59人に1人の子どもが自閉スペクトラム症と診断されています。

ニューロダイバーシティは、私たちの遺伝の、そして私たちの種としての進化の一部です。
自閉症ADHDの遺伝子は誤りではなく、ヒトゲノムの変異の結果であり、これまでに、そしてこれからも私たちの社会に強みをもたらしてきたものです。
ADHDと関連付けられている遺伝子の一つであるDRD4遺伝子は、新しいものを求める遺伝子として知られています。これは人の進化の舞台に、1万年以上前に登場しています。
自閉症と関連付けられている遺伝子も、1万年以上前にまで遡ります。
研究によるとこの自閉症と関連付けられている遺伝子の変異は、その並外れた記憶力や視覚・味覚・嗅覚の鋭敏さ、細部への観察眼、そして動物の行動など別の体系の理解力に優れていることのために、ヒトの進化の過程で正の選択を受けてきたのではないかと考えられています。
こうした特性は、現在もなお有利なものだからこそ、遺伝子プールに残っているのでしょう。

私は神経が異なる配線のされ方をしている子どもの親たちに助言する心理学者として、どちらの道が良いか選べることを伝えます。環境に合うよう子どもを変えようとするのか、それとも子どもに合うよう環境を変えようとするのか、と。
私達の世界には様々に異なる微細環境や「サブカルチャー」があります。
自閉症ADHDのある人にとって、自らのあり方で成功するということは、自分に最もあったニッチを見つけるという形でもたらされるかもしれません。
自らの強みが光り、困難が最小化されるようなニッチを見つけること。
ADHDのある人は、すばやく変化する状況、複雑多岐な状況、想像力や常識にとらわれない思考が報われる状況で成功しやすいようです。
コメディアンや探偵、起業家、ジャーナリスト、俳優、救急医療技師や写真家などが良いかもしれません。

しかし、私は自閉症ADHDとともに生きることがたやすいことだなどと言いたいのではありません。
そして、神経発達に起因する体調の問題や障害、違いによって引き起こされる現実の苦しみを軽視しようなどとは決して思っていません。
それでもなお、この現代は、世界が脳の違いの美しさと価値を発見していく時代でもあるのです。

生物多様性が生命一般にとって極めて重要なのと同じように、ニューロダイバーシティ(神経多様性)もヒトの種にとってあらゆる面で重要なのです。
私の思い描く未来は、ニューロダイバーシティに寛容でありかつ受け入れる社会であり、そこでは違いはヒトにより深さと広がりをもたらすものとして祝われるようになるというものです。
私は、脳の配線が異なっている子どもたちに、他の人達の「普通」という考えに合わせるのではなく、自分自身のニッチを見つけることが応援されるようになってほしいと願います。
多様性とはあらゆる意味で私達の世界をより良い場所にするものであり、異なる考え方をする人たちこそがその中で大きな部分なのです。

【翻訳記事】自閉症の諸特性・インクルーシブ版

Twitterおねにい (@yosicco) | Twitter さんが紹介されていた、autisticality.comさんのこちらの記事が興味深かったのでざっと翻訳してみました。
autisticality.com

問題

自閉症というのは大きく、とっちらかっていて、わけのわからないもので、本当に理解しているなんて人は誰もいない。自閉症の特性についての良い要約や記述をすることは難しい。なぜなら、自閉症とは実のところ何なのかということについて誰も合意ができないから。でもこうしたことを考慮に入れるとしてもなお、私は自閉症の特性について要約・記述した記事やリーフレットで満足できるものをひとつも見たことがない。私が読んだことのある記載は、以下の問題の少なくともひとつをはらんでいた。

  • 重み付けが間違っている: 定型神経発達の人が書いた自閉症の記述の多くは社会性についてばかり焦点を当てているものがとても多い。しばしば自閉症は完全に社会性にまつわるものとして書かれ、ほかの違いは、よしんば言及されたとしても、たまたま生じているものと考えられている。
  • あいまい: 「三つ組の障害」が悪の元凶。この言葉は社会的特性を勝手に「相互作用」「コミュニケーション」「想像力」にわけるけど、このカテゴリーの間にはっきりとした境目なんてものは断じてない。これは意味がなく無益なわけ方で、説明を簡単にすることからはかけ離れていて、何の役にも立たない。ただ混乱を増すだけで。
  • 病気扱い: これはあまりにも広く行われていることで、わざわざ言ってもしかたのないことかもしれない。自閉症はほとんど普遍的に、障害、疾患、病気として説明され、自閉症の特性は症状や欠陥として説明される。このバイアスは不正確であるとともに有害だ。
  • 限定的: 自閉症者は驚くほど多様だ。そしてなお往々にして、この多様性は「スペクトラムの両端」とか「高機能かどうか」とか、アスペルガー症候群と古典的自閉症の対比として受け止められているに過ぎない。こうした形で自閉症者の間の多様性を表現しようとすることは些末な試みなだけでなく、それ自体で積極的に有害なものだ。

解決策

なので、自分で書くことにした。これは診断基準のセットじゃない。だって、私はどうやって自閉症を診断するかを知らないんだから。これは自閉症の特性と自閉症者について、インクルーシブに、正確に、有用に、価値中立的に説明しようとする私の最大限の試み。
以下に挙げることの多くは、正反対の例を取り上げている。たとえば、「Xが嫌いなことがある」と、「Xが好きなことがある」というように。これは手違いではなく、自閉症者がどれだけ多様でありうるかということを反映している。自閉症者は様々な特性の正規分布グラフの端っこにいることが多いけど、同じ側の端っことは限らない。このリストはインクルーシブなものにしようとして作ったので、どんな自閉症者もリストの特性をすべて持つことはない。それは不可能だ。だってこの中の多くはお互いに両立しないものなんだから!
自閉症を定義する最低限の基準ではなく、自閉症特性のとりうる範囲を最大限広く含めようとしたことこそが鍵。あらゆる自閉症者が共通に持つものを示す代わりに(そんなことをしようとしてもどこにでもあるようなちっぽけで役に立たない説明にしかならないはず)、このリストでは自閉症者に見出す大いなる多様性を示すことを意図した。

リストだよ

さて、前置きはこれまでとして、実際のリストにいってみよう。3つの大きなカテゴリー、「社会性」「感覚」「認知機能」にわかれている。この分け方は完璧なものではないけど、わけるとしたらこれが最善ではないかと思うし、リストをわかりやすくしてくれるはずだ。それぞれのカテゴリーは節(数字)と小節(アルファベット)からなり、小節はそれぞれの特性の例を含んでいる。

社会性

1.ボディーランゲージ・非言語コミュニケーションの違い
A.アイコンタクトの使い方の違い

  • 他の人よりもアイコンタクトをよく使うことも、あまり使わないこともある
  • 特定の状況でしかアイコンタクトを使わないことがある(例:親しい人とだけ、あるいは知らない人とだけ)
  • 他の人と違う方法で、あるいはちがう場面でアイコンタクトを使うことがある

B.声のトーンの使い方の違い

  • 他の人よりも声のトーンの使いわけの幅が少ないことや、声のトーンに意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人よりも声のトーンの使い分けの幅が多いことや、話す時に「歌うように話す」ことがある
  • 他の人よりも大きい声で話すことも、小さい声で話すこともある

C.ジェスチャー・ボディーランゲージの使い方の違い

  • 他の人よりもジェスチャーを使うことが少ないことがある
  • ボディーランゲージにコミュニケーションのための意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人と違う種類のボディーランゲージをコミュニケーションのための使うことがある
  • 他の人よりもよくジェスチャーを使うことがある

D.表情の使い方の違い

  • 他の人よりも表情の使い分けの幅が少ないことがある
  • 表情にコミュニケーションのための意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人と違う種類の表情を使うことがある
  • 他の人よりも表現豊かな、大げさな表情を使うことがある

2.言語コミュニケーションの違い
A.文字通りのコミュニケーション・比喩を用いるコミュニケーションの使い方の違い

  • 文字通りの言葉遣いのみ使うことがある
  • 一般的でない種類の比喩やたとえを使うことがある
  • 使う言葉の精密さ・正確さに重きを置くことがある
  • 他の人と違う意味で言葉を使うことがある

B.発話の使い方の違い

  • ストレス下など特定の状況で話すのが難しいことがある
  • 口頭の言葉を全く使わないことがある
  • コミュニケーションのためにエコラリア(特定の言葉やフレーズを繰り返すこと)を使うことがある
  • 文字ベースのコミュニケーションを強く好んだり、口頭の言葉を使うことが難しいことがある
  • 口頭の言葉を強く好んだり、文字ベースのコミュニケーションを使うことが難しいことがある

3.やりとりや関係性の違い
A.関係性についての欲求の違い

  • 社会的関係性をあまり、あるいはまったく望まなかったり必要としなかったりすることがある
  • 特定の種類の関係性を望み、他の種類は望まないことがある
  • ダイナミックな、社会的な規範にあまり縛られない、一般的でない形の関係性を築くことがある
  • 関係性を繋ぐのに際して社会的規範やルールに強く依存することがある

B.集団の好みの違い

  • 一対一のやりとりを必要として、大きな集団では苦労することがある
  • 大きな集団でのやりとりを必要として、一対一では苦労することがある
  • 大きな集団でのやり取りで、構造やルールを多く必要とすることがある
  • 相互のやりとりよりも、大勢に向けて発表することのほうが簡単なことがある

C.やりとりの好みの違い

  • 実用的・実際的なやりとりを好んだり、焦点の定まらないやりとりが難しいことがある
  • 他の活動や情報入力と同時にやりとりに意識を向けることができないことがある
  • 同時並行なやりとりを好んだり、直球的なやりとりが難しいことがある

D.他の人との社会本能の違い

  • 他の人、特に非自閉症者とのコミュニケーションに困ることがある
  • 関係性を築くために、他の自閉症者に惹きつけられることがある
  • 他の人から社会的につまはじきにされていることがある
  • 他の文化の一員のように感じることがある
感覚

1.感覚の敏感さの違い
A.ある種の感覚や特定の感覚刺激への感受性の強さ(例:まぶしい光、ある種の質感、強い匂い、うるさい音)

  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に苦痛を覚えることがある
  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に気持ち悪くなったりしんどくなったりすることがある
  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に落ち着かず、避けたり逃げたりしたくなることがある

B.ある種の感覚や特定の感覚刺激への感受性の弱さ(例:痛み、温度、味)

  • 他の人がふつう反応する感覚刺激に気づかないことがある
  • 他の人がふつう弁別できる感覚刺激を弁別できないことがある
  • ある種の感覚刺激について、他の人がふつう必要とするよりも強い入力を必要とすることがある

C.ある種の感覚や特定の感覚刺激についてちょうどよく感じる範囲が狭い

  • 刺激のちょうどよい強さを探るのに苦労することがある
  • ある種の感覚刺激についてすぐに敏感・鈍感になりやすいことがある
  • 刺激入力についてとても独特な形や強さを必要とすることがある

2.特定の種類の感覚入力への強い喜び・欲求・必要性(自己刺激行動にあらわれる)
A.視覚自己刺激

  • ある種の光、模様、形、色を見つめることがある
  • ある種の動くもの、光の変化、光のまたたきを見つめることがある

B.圧覚自己刺激

  • 重いものを載せて自分に圧力をかけることがある
  • 体重が圧力としてかかるような姿勢で座ったり横になったりすることがある

C.前庭覚自己刺激

  • 体を前後に揺らしたり回ったりするようなある種の動き方をすることがある
  • 体を大きく揺らしたり、すばやく加速させたりするなどの動きを伴う活動をしたがることがある

D.固有受容覚自己刺激

  • 手をパタパタさせたり、手をヒラヒラさせたり、髪をクルクルしたりというような特定の方法で体を動かすことがある
  • 物や周りのものを触ったり掴んだりすることがある

E.触覚自己刺激

  • 特有の物や質感の感触に惹かれることがある
  • 手や顔などの体の部位を物でなでたりこすったりすることがある

F.聴覚自己刺激

  • 口、声、体を使って特有の音をたてることがある
  • 物を使って特有の音をたてることがある

G.その他の自己刺激

  • 特定の匂い、味、その他の感覚刺激に強く惹かれることがある
  • 特有の強烈な感覚的経験(例:辛い食べ物)に強く惹かれることがある
  • 複数の異なる種類の感覚刺激を組み合わせる形で自己刺激をすることがある

3.感覚情報処理のその他の違い
A.複数の、組み合わさった感覚刺激の処理の仕方の違い

  • 体験した感覚を個々の部分に分解するのが難しいことがある
  • 個々の部分をひとつの感覚体験に総合するのが難しいことがある

B.感覚調整の難しさ

  • 関係のある刺激に注意を向けるのが難しいことがある
  • 関係のない刺激から注意を逸らすのが難しいことがある
  • 一度に少ない感覚情報入力しかない統制された環境を必要とすることがある
  • その他の情報処理における特定の違いや難しさ
  • 口頭で話されたことを理解したり解釈したりするのが難しいことがある(聴覚情報処理障害)
  • 異なる感覚を混ぜたり一体化したりすることがある(共感覚
認知機能

1.集中力・堅固さの強さ
A.焦点化・関心の強さ

  • 特定の少ない関心事に集中することに多くの時間を費やすことがある
  • ある種のテーマ・活動に長期間にわたって傾注することがある
  • 関心のあるテーマに強い感情的な結びつきを持つことがある
  • 関心のあるテーマについて詳細なプロ級の知識を持つことがある

B.決まった手順や同じであることを好む

  • 日課、週課、なんらかの活動などに特定の決まった手順があることがある
  • 決まった手順や計画が妨げられた時に落ち着かなくなったり当惑したりすることがある
  • 事前に伸長に計画をする必要があることがある
  • 新しい、なれない状況に置かれることについて他の人よりも不安が強いことがある

2.認知機能の違い
A.実行機能の違い

  • ひとつかそれ以上の記憶のタイプ(例:短期記憶、長期記憶)について特に強みとしていることや弱みとしていることがある
  • 一連の段階や行動を計画したり実行したりするのが難しいことがある
  • 問題を見つけたり解決したりするのが難しいことがある
  • 関係のある情報や感覚入力に集中するのが難しいことがある
  • 行動を始めたり、終えたり、切り替えたりするのが難しいことがある
  • 衝動性のコントロールが苦手なことがある
  • 時間の感覚が弱いことがある

B.感情を体験したり処理したりすることの違い

  • 物理的な感覚を感情と取り違えたり、その逆に勘定を物理的な感覚と取り違えることがある
  • 感情を特定したり名付けたりするのが難しいことがある(アレキシサイミア)
  • 他の人の感情を認識したり理解したりするのが難しいことがある
  • 他の人の感情を意図せず体験することがある

C.認知機能の幅の違い

  • 他の人よりも処理速度が低いことがある
  • 特定の領域(例:非言語的推論、言語、音楽、数学)について極めて強みとしていることがある
  • 顔を認識しにくいことがある(相貌失認)
  • 他の人よりも時が経つ中で能力が変わりやすい

3.思考様式の違い
A.細部へのアプローチの違い

  • 総体的な「全体像」よりも先に、あるいはその代わりに、細部を意識する傾向を強く持つことがある
  • 細部よりも先に、あるいはその代わりに、総体的な「全体像」を意識する傾向を強く持つことがある
  • 一般論から具体例を導き出すのが難しいことがある
  • 具体例から一般化するのが難しいことがある

B.規則性や体系へのアプローチの違い

  • 規則性を認識することに長けていることがある
  • 小さな細部や間違いを見つけることに長けていることがある
  • 数学、科学、パズル、言語などの科目を体系的に理解することに長けていることがある
  • 情報や物を整理したり整列させたりするのが楽しいことがある

C.情報処理や意思決定のやり方の違い

  • 「白か黒か」思考や極端な論理になる傾向をもつことがある
  • 特有の考え方(例:論理的、感情的)への強い好みを持つことがある
  • 「型破り」な考え方をしているように見えたり、他の人と異なる方法で結論にたどり着いているように見えることがある

1.特性の幅
A.長期的な幅

  • 幼児期から成人期へ発達するなかで変化することがある
  • 成人期の間に年月を経て変化することがある

B.環境

  • ストレスが掛かっていたり気分がわるかったり疲れたりしているときに、過負荷に敏感なことがある
  • 社会的状況により異なる社会的行動をとることがある

2.あらわれ方の幅
A.意識的な幅

  • ある種の状況で意図的に特性を隠すことがある
  • 本能を置き換えるために身に着けたやり方を用いることがある

B.無意識的な幅

  • 幼児期から特性の隠し方を身に着けていることがある
  • 特性のあらわれ方に影響するトラウマ体験や精神疾患を抱えていることがある

このリストを使ってね

三つ組の障害とかほかの欠陥のある要約の代わりに、みんながこのリストや、これに基づいた記載を使ってくれたらとてもうれしい。何かで使うなら、ちゃんとこの記事が元だとわかるようにしてね。でもまぁ誰もが自閉症のよりよい説明を読めることのほうが気になるんだけどね。

【翻訳記事】自閉症の諸特性・インクルーシブ版

Twitterおねにい (@yosicco) | Twitter さんが紹介されていた、autisticality.comさんのこちらの記事が興味深かったのでざっと翻訳してみました。
autisticality.com

問題

自閉症というのは大きく、とっちらかっていて、わけのわからないものであり、本当に理解しているなんて人は誰もいない。自閉症の特性についての良い要約や記述をすることは難しい。なぜならば、自閉症とは実のところ何なのかということについて誰も合意ができないからだ。しかしこうしたことを考慮に入れるとしてもなお、私は自閉症の特性について要約・記述した記事やリーフレットで満足できるものをひとつも見たことがないのだ。私が読んだことのある記載は、以下の問題の少なくともひとつをはらんでいた。

  • 重み付けが間違っている: 定型神経発達の人が書いた自閉症の記述の多くは社会性についてばかり焦点を当てているものがとても多い。しばしば自閉症は完全に社会性にまつわるものとして書かれ、ほかの違いは、よしんば言及されたとしても、たまたま生じているものと考えられている。
  • あいまい: 「三つ組の障害」が悪の元凶。この言葉は社会的特性を勝手に「相互作用」「コミュニケーション」「想像力」にわけるが、このカテゴリーの間にはっきりとした境目なんてものは断じてない。これは意味がなく無益なわけ方で、説明を簡単にすることからはかけ離れていて、何の役にも立たない。ただ混乱を増すだけで。
  • 病気扱い: これはあまりにも広く行われていることで、わざわざ言ってもしかたのないことかもしれない。自閉症はほとんど普遍的に、障害、疾患、病気として説明され、自閉症の特性は症状や欠陥として説明される。このバイアスは不正確であるとともに有害である。
  • 限定的: 自閉症者は驚くほど多様である。そしてなお往々にして、この多様性は「スペクトラムの両端」とか「高機能かどうか」とか、アスペルガー症候群と古典的自閉症の対比として受け止められているに過ぎない。こうした形で自閉症者の間の多様性を表現しようとすることは些末な試みであるだけでなく、それ自体で積極的に有害なものである。

解決策

なので、自分で書くことにした。これは診断基準のセットではない。だって、どうやって自閉症を診断するか私は知らないんだから。これは自閉症の特性と自閉症者について、インクルーシブに、正確に、有用に、価値中立的に説明しようとする私の最大限の試みである。
以下に挙げることの多くは、正反対の例を取り上げている。たとえば、「Xが嫌いなことがある」と、「Xが好きなことがある」というように。これは手違いではなく、自閉症者がどれだけ多様でありうるかということを反映しているものである。自閉症者は様々な特性の正規分布グラフの端っこにいることが多いが、同じ側の端っことは限らない。このリストはインクルーシブなものにしようとして作ったので、どんな自閉症者もリストの特性をすべて持つことはない。それは不可能だ。だってこの中の多くはお互いに両立しないものなんだから!
自閉症を定義する最低限の基準ではなく、自閉症特性のとりうる範囲を最大限広く含めようとしたことこそが鍵である。あらゆる自閉症者が共通に持つものを示す代わりに(そんなことをしようとしてもどこにでもあるようなちっぽけで役に立たない説明にしかならないはず)、このリストでは自閉症者のなかで見出す大いなる多様性を示すことを意図した。

リストだよ

さて、前置きはこれまでとして、実際のリストにいってみよう。3つの大きなカテゴリー、「社会性」「感覚」「認知機能」にわかれている。この分け方は完璧なものではないけど、わけるとしたらこれが最善ではないかと思うし、リストをわかりやすくしてくれるはずだ。それぞれのカテゴリーは節(数字)と小節(アルファベット)からなり、小節はそれぞれの特性の例を含んでいる。

社会性

1.ボディーランゲージ・非言語コミュニケーションの違い
A.アイコンタクトの使い方の違い

  • 他の人よりもアイコンタクトをよく使うことも、あまり使わないこともある
  • 特定の状況でしかアイコンタクトを使わないことがある(例:親しい人とだけ、あるいは知らない人とだけ)
  • 他の人と違う方法で、あるいはちがう場面でアイコンタクトを使うことがある

B.声のトーンの使い方の違い

  • 他の人よりも声のトーンの使いわけの幅が少ないことや、声のトーンに意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人よりも声のトーンの使い分けの幅が多いことや、話す時に「歌うように話す」ことがある
  • 他の人よりも大きい声で話すことも、小さい声で話すこともある

C.ジェスチャー・ボディーランゲージの使い方の違い

  • 他の人よりもジェスチャーを使うことが少ないことがある
  • ボディーランゲージにコミュニケーションのための意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人と違う種類のボディーランゲージをコミュニケーションのための使うことがある
  • 他の人よりもよくジェスチャーを使うことがある

D.表情の使い方の違い

  • 他の人よりも表情の使い分けの幅が少ないことがある
  • 表情にコミュニケーションのための意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人と違う種類の表情を使うことがある
  • 他の人よりも表現豊かな、大げさな表情を使うことがある

2.言語コミュニケーションの違い
A.文字通りのコミュニケーション・比喩を用いるコミュニケーションの使い方の違い

  • 文字通りの言葉遣いのみ使うことがある
  • 一般的でない種類の比喩やたとえを使うことがある
  • 使う言葉の精密さ・正確さに重きを置くことがある
  • 他の人と違う意味で言葉を使うことがある

B.発話の使い方の違い

  • ストレス下など特定の状況で話すのが難しいことがある
  • 口頭の言葉を全く使わないことがある
  • コミュニケーションのためにエコラリア(特定の言葉やフレーズを繰り返すこと)を使うことがある
  • 文字ベースのコミュニケーションを強く好んだり、口頭の言葉を使うことが難しいことがある
  • 口頭の言葉を強く好んだり、文字ベースのコミュニケーションを使うことが難しいことがある

3.やりとりや関係性の違い
A.関係性についての欲求の違い

  • 社会的関係性をあまり、あるいはまったく望まなかったり必要としなかったりすることがある
  • 特定の種類の関係性を望み、他の種類は望まないことがある
  • ダイナミックな、社会的な規範にあまり縛られない、一般的でない形の関係性を築くことがある
  • 関係性を繋ぐのに際して社会的規範やルールに強く依存することがある

B.集団の好みの違い

  • 一対一のやりとりを必要として、大きな集団では苦労することがある
  • 大きな集団でのやりとりを必要として、一対一では苦労することがある
  • 大きな集団でのやり取りで、構造やルールを多く必要とすることがある
  • 相互のやりとりよりも、大勢に向けて発表することのほうが簡単なことがある

C.やりとりの好みの違い

  • 実用的・実際的なやりとりを好んだり、焦点の定まらないやりとりが難しいことがある
  • 他の活動や情報入力と同時にやりとりに意識を向けることができないことがある
  • 同時並行なやりとりを好んだり、直球的なやりとりが難しいことがある

D.他の人との社会本能の違い

  • 他の人、特に非自閉症者とのコミュニケーションに困ることがある
  • 関係性を築くために、他の自閉症者に惹きつけられることがある
  • 他の人から社会的につまはじきにされていることがある
  • 他の文化の一員のように感じることがある
感覚

1.感覚の敏感さの違い
A.ある種の感覚や特定の感覚刺激への感受性の強さ(例:まぶしい光、ある種の質感、強い匂い、うるさい音)

  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に苦痛を覚えることがある
  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に気持ち悪くなったりしんどくなったりすることがある
  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に落ち着かず、避けたり逃げたりしたくなることがある

B.ある種の感覚や特定の感覚刺激への感受性の弱さ(例:痛み、温度、味)

  • 他の人がふつう反応する感覚刺激に気づかないことがある
  • 他の人がふつう弁別できる感覚刺激を弁別できないことがある
  • ある種の感覚刺激について、他の人がふつう必要とするよりも強い入力を必要とすることがある

C.ある種の感覚や特定の感覚刺激についてちょうどよく感じる範囲が狭い

  • 刺激のちょうどよい強さを探るのに苦労することがある
  • ある種の感覚刺激についてすぐに敏感・鈍感になりやすいことがある
  • 刺激入力についてとても独特な形や強さを必要とすることがある

2.特定の種類の感覚入力への強い喜び・欲求・必要性(自己刺激行動にあらわれる)
A.視覚自己刺激

  • ある種の光、模様、形、色を見つめることがある
  • ある種の動くもの、光の変化、光のまたたきを見つめることがある

B.圧覚自己刺激

  • 重いものを載せて自分に圧力をかけることがある
  • 体重が圧力としてかかるような姿勢で座ったり横になったりすることがある

C.前庭覚自己刺激

  • 体を前後に揺らしたり回ったりするようなある種の動き方をすることがある
  • 体を大きく揺らしたり、すばやく加速させたりするなどの動きを伴う活動をしたがることがある

D.固有受容覚自己刺激

  • 手をパタパタさせたり、手をヒラヒラさせたり、髪をクルクルしたりというような特定の方法で体を動かすことがある
  • 物や周りのものを触ったり掴んだりすることがある

E.触覚自己刺激

  • 特有の物や質感の感触に惹かれることがある
  • 手や顔などの体の部位を物でなでたりこすったりすることがある

F.聴覚自己刺激

  • 口、声、体を使って特有の音をたてることがある
  • 物を使って特有の音をたてることがある

G.その他の自己刺激

  • 特定の匂い、味、その他の感覚刺激に強く惹かれることがある
  • 特有の強烈な感覚的経験(例:辛い食べ物)に強く惹かれることがある
  • 複数の異なる種類の感覚刺激を組み合わせる形で自己刺激をすることがある

3.感覚情報処理のその他の違い
A.複数の、組み合わさった感覚刺激の処理の仕方の違い

  • 体験した感覚を個々の部分に分解するのが難しいことがある
  • 個々の部分をひとつの感覚体験に総合するのが難しいことがある

B.感覚調整の難しさ

  • 関係のある刺激に注意を向けるのが難しいことがある
  • 関係のない刺激から注意を逸らすのが難しいことがある
  • 一度に少ない感覚情報入力しかない統制された環境を必要とすることがある
  • その他の情報処理における特定の違いや難しさ
  • 口頭で話されたことを理解したり解釈したりするのが難しいことがある(聴覚情報処理障害)
  • 異なる感覚を混ぜたり一体化したりすることがある(共感覚
認知機能

1.集中力・堅固さの強さ
A.焦点化・関心の強さ

  • 特定の少ない関心事に集中することに多くの時間を費やすことがある
  • ある種のテーマ・活動に長期間にわたって傾注することがある
  • 関心のあるテーマに強い感情的な結びつきを持つことがある
  • 関心のあるテーマについて詳細なプロ級の知識を持つことがある

B.決まった手順や同じであることを好む

  • 日課、週課、なんらかの活動などに特定の決まった手順があることがある
  • 決まった手順や計画が妨げられた時に落ち着かなくなったり当惑したりすることがある
  • 事前に伸長に計画をする必要があることがある
  • 新しい、なれない状況に置かれることについて他の人よりも不安が強いことがある

2.認知機能の違い
A.実行機能の違い

  • ひとつかそれ以上の記憶のタイプ(例:短期記憶、長期記憶)について特に強みとしていることや弱みとしていることがある
  • 一連の段階や行動を計画したり実行したりするのが難しいことがある
  • 問題を見つけたり解決したりするのが難しいことがある
  • 関係のある情報や感覚入力に集中するのが難しいことがある
  • 行動を始めたり、終えたり、切り替えたりするのが難しいことがある
  • 衝動性のコントロールが苦手なことがある
  • 時間の感覚が弱いことがある

B.感情を体験したり処理したりすることの違い

  • 物理的な感覚を感情と取り違えたり、その逆に勘定を物理的な感覚と取り違えることがある
  • 感情を特定したり名付けたりするのが難しいことがある(アレキシサイミア)
  • 他の人の感情を認識したり理解したりするのが難しいことがある
  • 他の人の感情を意図せず体験することがある

C.認知機能の幅の違い

  • 他の人よりも処理速度が低いことがある
  • 特定の領域(例:非言語的推論、言語、音楽、数学)について極めて強みとしていることがある
  • 顔を認識しにくいことがある(相貌失認)
  • 他の人よりも時が経つ中で能力が変わりやすい

3.思考様式の違い
A.細部へのアプローチの違い

  • 総体的な「全体像」よりも先に、あるいはその代わりに、細部を意識する傾向を強く持つことがある
  • 細部よりも先に、あるいはその代わりに、総体的な「全体像」を意識する傾向を強く持つことがある
  • 一般論から具体例を導き出すのが難しいことがある
  • 具体例から一般化するのが難しいことがある

B.規則性や体系へのアプローチの違い

  • 規則性を認識することに長けていることがある
  • 小さな細部や間違いを見つけることに長けていることがある
  • 数学、科学、パズル、言語などの科目を体系的に理解することに長けていることがある
  • 情報や物を整理したり整列させたりするのが楽しいことがある

C.情報処理や意思決定のやり方の違い

  • 「白か黒か」思考や極端な論理になる傾向をもつことがある
  • 特有の考え方(例:論理的、感情的)への強い好みを持つことがある
  • 「型破り」な考え方をしているように見えたり、他の人と異なる方法で結論にたどり着いているように見えることがある

1.特性の幅
A.長期的な幅

  • 幼児期から成人期へ発達するなかで変化することがある
  • 成人期の間に年月を経て変化することがある

B.環境

  • ストレスが掛かっていたり気分がわるかったり疲れたりしているときに、過負荷に敏感なことがある
  • 社会的状況により異なる社会的行動をとることがある

2.あらわれ方の幅
A.意識的な幅

  • ある種の状況で意図的に特性を隠すことがある
  • 本能を置き換えるために身に着けたやり方を用いることがある

B.無意識的な幅

  • 幼児期から特性の隠し方を身に着けていることがある
  • 特性のあらわれ方に影響するトラウマ体験や精神疾患を抱えていることがある

このリストを使ってね

三つ組の障害とかほかの欠陥のある要約の代わりに、みんながこのリストや、これに基づいた記載を使ってくれたらとてもうれしい。何かで使うなら、ちゃんとこの記事が元だとわかるようにしてね。でもまぁそれよりも、誰もが自閉症のよりよい説明を読めることのほうが本当は大事だけどね。

衆院選マニフェスト比較2017(児童虐待・子どもの貧困関係)

lessorさん(@lessor_tw)の恒例の労作まとめを拝読したら、最後にこんなボールが投げてあった。

以上は「障害者」に限ったマニフェスト紹介に過ぎないので、誰かが「子どもの貧困」とか「不登校」とか「生活困窮者」とかでも作ってくれるとうれしい。やってみるとわかるが、けっこうめんどくさい作業である。
衆院選マニフェスト比較2017(障害者分野) - 泣きやむまで 泣くといい

慣れないけど私もやってみよう。「虐待」「子ども/子供の貧困」というキーワードを検索、または目視で探して拾っています。児童手当や一律の教育無償化などは今回は取り上げていません。
(lessorさんのページの書き方をマネしています。あしからずご了承ください)

自民党

政策BANK2017(PDF)

「強く自立した沖縄」を国家戦略と位置づけ、税財政含めて沖縄振興策を総合的・積極的に推進します。特に、西普天間住宅地区の跡地利用の推進や、子供の貧困対策、離島振興、観光振興、人材育成等に集中的に取り組みます。

若い世代への公的支援を充実するため、「子育て安心プラン」を着実に実施し待機児童の解消を図るとともに、子育て支援サービスの質の改善にも取り組みます。妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援を進めるとともに、児童虐待防止対策やひとり親家庭支援を強化します。

生活保護世帯の子供の進学支援の強化など生活困窮者の自立に向けた支援や子供の貧困対策を強化します。「自殺総合対策大綱」に基づき誰も自殺に追い込まれることのない社会を作ります。

小さい字で全19ページのパンフレットなので、こんな感じで触れている。特に沖縄に絡めて子供の貧困対策を挙げてくる「特別扱い」あり。
ところでなんで「生活困窮者の自立に向けた支援や子供の貧困対策」の段落に、接続詞無しで自殺対策の話が続くんだろう??

公明党

重点政策(PDF)

児童虐待防止や子どもの貧困対策など、子育て支援の充実に取り組みます。

親がいない、または親が育てられない子どもたちに原則、家庭養護を優先し、児童養護施設等においては専門的ケアや自立支援の拡充を図ります。

児童虐待を防止するため、児童相談所の設置や体制強化を推進します、

全22ページのパンフレットの中で、「子どもの貧困」というタームは総論で1回出てきている。家庭養護>施設養護という考えがあるようだけど、「里親」という言葉を使わないと普通の人にはわからないんじゃないかな。

希望の党

希望の党政策パンフレット(PDF)
「虐待」、「貧困」などのキーワードはゼロ。
ちょっと待って。殺処分されるペット以下の関心?

日本維新の会

政策|日本維新の会(ウェブページ)
特に記載が見当たりません。

立憲民主党

政策パンフレット(PDF)

子どもに引き継がれてしまう貧困の連鎖を断つための教育生活支援、虐待をなくすために児童相談所児童養護施設、民間団体との協働を強化

急ごしらえの4ページしかない短いパンフレットに、簡潔な1文があり。貧困の連鎖と虐待とはセットで挙げられている。児童養護施設が虐待をなくすために動くのはなんだか難しい気もするけれど、この分野での主要プレイヤーとして認識していますよ、という意味か。

社民党

憲法を活かす政治(ウェブページ)

〇子どもの貧困と児童虐待を防止するための切れ目のない支援体制をつくります。

〇子どもの相談・救済機関となるチャイルドラインの拡大、「子どもオンブズマン」の実現に取り組みます。子どもの居場所づくり、学習支援、「子ども食堂」など地域の多様な支援を促進します。

〇子ども・子育て政策を一元的にすすめるとともに、若い世代の声を行政に反映させ、若者政策を総合的に推進するため、「子ども・若者省」の設置を検討します。

〇子どもや若者への支援を行うNPO法人等への寄付控除額の拡充や、資産寄付に対する相続税の控除を実現します。

目新しいシステム・アイデアが書かれているけれど、現行の児童相談所児童養護施設・里親にノータッチなのでイメージがよくわからない。厚労省から抜き出すのは案外大事かもしれない。

日本共産党

たくさんありますが、ざっと目につくのはこのあたり。
保護者支援、施設の改善、里親の支援、施設退所後の支援など偏らず全方位目配りされているのがすごい。

2017総選挙/各分野の政策 02、子ども・子育て―保育・教育の充実、経済的支援、子どもの健康(ウェブページ)

児童虐待や子育ての困難の背景には、若い世代の雇用破壊と貧困の広がりがあります。安心して子育てできるように、正規雇用化と時給1500円をめざして最低賃金の引き上げ、残業の上限規制による長時間労働の改善、教育費の負担軽減、福祉・社会保障の充実、子育てへの経済的支援など総合的な施策をつよめます。

児童虐待の防止、早期発見、子どもと親への専門的な支援などの独自の施策をつよめます。早期発見で子どもを守るために、保育所や学校、病院、児童相談所、保健所、子育て支援センター児童養護施設など、子どもにかかわる専門機関の連携をはかるとともに、職員の専門的な研修をつよめます。児童虐待の問題に対応する中核的役割を担う児童相談所は全国で210所しかありません。相談支援体制を充実させるために、児童相談所の増設、職員の抜本的な増員と専門性向上のための研修の充実、一時保護施設や児童福祉施設の整備増設、設備や職員配置の改善をはかります。虐待を受けた子どもへの専門的なケア、親にたいする経済的、心理・医療的、福祉的な支援をつよめます。

経済的、社会的に困難な事情をもった親や予期せぬ妊娠に悩んだりした時に、身近に相談できる体制を整備します。児童相談所児童福祉施設、小児病院や保健所、子育て支援センターなどが連携して、親への支援をつよめるとともに、困難な場合の受け入れ施設の拡充をすすめます。乳児院児童養護施設などの職員配置の改善・増員と負担軽減、施設の改善、小規模化、家庭的養護の推進を急ぎます。施設に暮らす子どもたちの教育、進学への支援をつよめます。里親制度はさまざまな事情で家庭で生活できない子どもたちを家庭的環境のもとで育てるための大切な制度です。使いやすい制度への改善、相談、里親同士の相互交流、児童相談所・学校などとの連携強化など里親への支援をつよめます。

「子どもの貧困」が深刻な問題になっているもとで、低所得世帯の子どもに、義務教育期間中の給食費・学用品代・修学旅行費などを援助する就学援助制度の役割はますます大きくなっています。それにもかかわらず、自公政権就学援助制度への国庫負担を廃止したことで、就学援助の縮小が各地ですすめられています。
経済的に困難な家庭の子どもたちが安心して義務教育が保障されるように、国庫負担制度を復活し、対象を生活保護基準×1.5倍まで広げ、支給額も増額するとともに、利用しやすい制度にします。教育扶助の額も同様に引き上げます。

2017総選挙/各分野の政策 03、子どもの貧困―子ども医療費、学校給食、児童扶養手当、教育費負担 子どもの貧困問題の解決にとりくみます(ウェブページ)

児童養護施設児童相談所など社会的養護の拡充をすすめます……児童養護施設乳児院、自立支援ホーム、里親など社会的養護のもとで生活する子どもたちは約4万8千人います。施設に入所している子どもたちの成長にとって家庭的な環境のなかで育つことが大切です。施設の小規模化をすすめます。支える職員の配置基準や専門職の配置を充実させます。職員の処遇改善をすすめます。

施設を退所する若者に、公営住宅の優先利用など住まいを保障し、進学や就労を支援します。国は社会的養護の若者に条件付き貸付奨学金でなく、すみやかに給付制奨学金の支給をおこなうべきです。どんな問題でも相談できるアフターケア事業を全国ですすめます。

児童相談所や自治体の児童家庭相談窓口に専門性のある児童福祉司などの配置を拡充し、保護者と子どもの支援をすすめます。

○子ども食堂・居場所づくりのとりくみを応援し公的支援をすすめます……無料か低額で利用できる子ども食堂が全国に広がっています。また、食事だけでなく、遊びや学習などもできる“居場所”づくりがボランティアやNPOなどのとりくみで広がっています。自治体の施設などを提供するなど自治体が積極的に協力し、国・自治体の財政支援をすすめます。

2017総選挙/各分野の政策 08、貧困―貧困率、低年金、医療・介護の改悪、雇用・賃金の破壊(ウェブページ)

遺伝子砂漠である5p14.1自閉症関連遺伝子座における脳関連遺伝子エンハンサー活性について(国立精神・神経医療研究センター)

※日本語表題は勝手訳

原典

Brain enhancer activities at the gene-poor 5p14.1 autism-associated locus (Scientific Reports)
Yukiko U. Inoue & Takayoshi Inoue
Scientific Reports 6, Article number: 31227 (2016)
doi:10.1038/srep31227
Received: 02 February 2016
Accepted: 14 July 2016
Published online: 09 August 2016

アブストラクトより
  • ゲノムワイド関連解析(多数のSNPの頻度とさまざまな疾患の関連を統計的に調べる手法)により、5p14.1にあるタンパク質をコードしていない領域にあるSNPと自閉症スペクトラムの有意な関連が指摘されていた
  • 細菌人工染色体(プラスミドベクターよりも長い塩基配列を扱えるベクター)によって、ヒトDNAの上記の領域をマウスに導入し、タンパク質をコードしていないこの領域が、実際に同じ染色体上の他の遺伝子の転写・発現調節に関わっているかを調べた
  • マウスでの実験において、脳の発達途上の時期に大脳皮質・線条体・小脳で、この遺伝子領域がエンハンサーとして働いていることが確かめられた
  • 大脳皮質・線条体・小脳はASD者の脳の特異性と関連があると言われている
  • 長鎖ncRNAであるモエシンアンチセンスRNA鎖が、モエシンタンパク質の翻訳調節を行い、脳の発生・発達に影響する可能性が指摘されていた
  • ただし、今回の実験ではヒト由来のモエシンアンチセンスRNA鎖による、マウスのモエシンタンパク質の発現量の変化は確かめられなかった
  • とはいえ、モエシンアンチセンスRNAが、特定の時期・場所で発現していることがin vivoで証明されたのは初めてのこと
小並感
  • ちゃんと読めているか自信がないので、本文も読もう
  • 非コード領域のSNP→ncRNAエンハンサー活性の変化→モエシンアンチセンスRNAの転写調節→モエシンタンパク質の翻訳の調節→脳の神経発達への影響→自閉症スペクトラム特性を持つ脳になる?
  • これもまた、遺伝子変異による脳の発達への影響を検討しているようなんだけど、後天的な治療にはどうすれば繋げていけるだろう

CHD8遺伝子ハプロ不全による自閉症スペクトラム様表現形マウス(九州大)

※日本語表題は勝手訳

原典

CHD8 haploinsufficiency results in autistic-like phenotypes in mice (Nature)
Yuta Katayama, Masaaki Nishiyama, Hirotaka Shoji, Yasuyuki Ohkawa, Atsuki Kawamura, Tetsuya Sato, Mikita Suyama, Toru Takumi, Tsuyoshi Miyakawa & Keiichi I. Nakayama
Nature (2016) doi:10.1038/nature19357
Received 17 March 2015 Accepted 11 August 2016 Published online 07 September 2016

アブストラクトより
  • 以前から、エクソームシーケンス分析(ゲノム全体ではなく、mRNAから翻訳されるエクソン部分だけを読み取り分析する)により、ASD者に多くの遺伝子変異が見られることがわかっていた。
  • 特に、CHD8というクロマチンモデリング(DNAをほぐしたりパッキングしたりして転写・発現をコントロール)をするタンパク質の遺伝子の変異が最も多かった。
  • マウスについて、2つあるCHD8遺伝子のうち片方に変異を起こさせたマウスを作った。
  • そのマウスは不安・繰り返し行動・社会的行動の変化の点で自閉症スペクトラム様の特徴が見られた。
  • CHD8遺伝子の片方が変異し、正常なクロマチンモデラーの量が半減してしまうだけで、微小だが広範に渡る遺伝子発現の変化が引き起こされている。
  • Gene set enrichment analysis(特定の遺伝子セットの発現量が有意に増加・減少しているかどうかを統計的に検討する手法?)により、変異マウスでは胚生期から神経発達の遅れが見られた。
  • CHD8の発現量の減少により、様々な神経に関する遺伝子の転写に関わる転写抑制因子であるRESTが過剰に活性化していた。
  • ASD者の脳でも、RESTの過剰な活性化が見られている。
小並感

現在使われている一般的な向精神薬・中枢神経刺激薬やオキシトシンなどは、神経伝達物質をブロックしたり再取り込みを促したりして作用の量を調整するものだと認識しているんだけど、こうした研究が進んでいくと別のレベルで作用する治療薬がでてくるんだろうか。
神経ネットワークの発達・刈り込みへの介入は早期でないと効かない?それとも神経伝達物質とかレセプターとかの転写の問題ならば、機序の解明が進んだ上で、治療薬は従来のものと同じような形になる?