hopperのメモ帳

勉強などする途中でのメモを置いてます。

CHD8遺伝子ハプロ不全による自閉症スペクトラム様表現形マウス(九州大)

※日本語表題は勝手訳

原典

CHD8 haploinsufficiency results in autistic-like phenotypes in mice (Nature)
Yuta Katayama, Masaaki Nishiyama, Hirotaka Shoji, Yasuyuki Ohkawa, Atsuki Kawamura, Tetsuya Sato, Mikita Suyama, Toru Takumi, Tsuyoshi Miyakawa & Keiichi I. Nakayama
Nature (2016) doi:10.1038/nature19357
Received 17 March 2015 Accepted 11 August 2016 Published online 07 September 2016

アブストラクトより
  • 以前から、エクソームシーケンス分析(ゲノム全体ではなく、mRNAから翻訳されるエクソン部分だけを読み取り分析する)により、ASD者に多くの遺伝子変異が見られることがわかっていた。
  • 特に、CHD8というクロマチンモデリング(DNAをほぐしたりパッキングしたりして転写・発現をコントロール)をするタンパク質の遺伝子の変異が最も多かった。
  • マウスについて、2つあるCHD8遺伝子のうち片方に変異を起こさせたマウスを作った。
  • そのマウスは不安・繰り返し行動・社会的行動の変化の点で自閉症スペクトラム様の特徴が見られた。
  • CHD8遺伝子の片方が変異し、正常なクロマチンモデラーの量が半減してしまうだけで、微小だが広範に渡る遺伝子発現の変化が引き起こされている。
  • Gene set enrichment analysis(特定の遺伝子セットの発現量が有意に増加・減少しているかどうかを統計的に検討する手法?)により、変異マウスでは胚生期から神経発達の遅れが見られた。
  • CHD8の発現量の減少により、様々な神経に関する遺伝子の転写に関わる転写抑制因子であるRESTが過剰に活性化していた。
  • ASD者の脳でも、RESTの過剰な活性化が見られている。
小並感

現在使われている一般的な向精神薬・中枢神経刺激薬やオキシトシンなどは、神経伝達物質をブロックしたり再取り込みを促したりして作用の量を調整するものだと認識しているんだけど、こうした研究が進んでいくと別のレベルで作用する治療薬がでてくるんだろうか。
神経ネットワークの発達・刈り込みへの介入は早期でないと効かない?それとも神経伝達物質とかレセプターとかの転写の問題ならば、機序の解明が進んだ上で、治療薬は従来のものと同じような形になる?