遺伝子砂漠である5p14.1自閉症関連遺伝子座における脳関連遺伝子エンハンサー活性について(国立精神・神経医療研究センター)
※日本語表題は勝手訳
原典
Brain enhancer activities at the gene-poor 5p14.1 autism-associated locus (Scientific Reports)
Yukiko U. Inoue & Takayoshi Inoue
Scientific Reports 6, Article number: 31227 (2016)
doi:10.1038/srep31227
Received: 02 February 2016
Accepted: 14 July 2016
Published online: 09 August 2016
アブストラクトより
- ゲノムワイド関連解析(多数のSNPの頻度とさまざまな疾患の関連を統計的に調べる手法)により、5p14.1にあるタンパク質をコードしていない領域にあるSNPと自閉症スペクトラムの有意な関連が指摘されていた
- 細菌人工染色体(プラスミドベクターよりも長い塩基配列を扱えるベクター)によって、ヒトDNAの上記の領域をマウスに導入し、タンパク質をコードしていないこの領域が、実際に同じ染色体上の他の遺伝子の転写・発現調節に関わっているかを調べた
- マウスでの実験において、脳の発達途上の時期に大脳皮質・線条体・小脳で、この遺伝子領域がエンハンサーとして働いていることが確かめられた
- 大脳皮質・線条体・小脳はASD者の脳の特異性と関連があると言われている
- 長鎖ncRNAであるモエシンアンチセンスRNA鎖が、モエシンタンパク質の翻訳調節を行い、脳の発生・発達に影響する可能性が指摘されていた
- ただし、今回の実験ではヒト由来のモエシンアンチセンスRNA鎖による、マウスのモエシンタンパク質の発現量の変化は確かめられなかった
- とはいえ、モエシンアンチセンスRNAが、特定の時期・場所で発現していることがin vivoで証明されたのは初めてのこと