hopperのメモ帳

勉強などする途中でのメモを置いてます。

【翻訳記事】自閉症の諸特性・インクルーシブ版

Twitterおねにい (@yosicco) | Twitter さんが紹介されていた、autisticality.comさんのこちらの記事が興味深かったのでざっと翻訳してみました。
autisticality.com

問題

自閉症というのは大きく、とっちらかっていて、わけのわからないものであり、本当に理解しているなんて人は誰もいない。自閉症の特性についての良い要約や記述をすることは難しい。なぜならば、自閉症とは実のところ何なのかということについて誰も合意ができないからだ。しかしこうしたことを考慮に入れるとしてもなお、私は自閉症の特性について要約・記述した記事やリーフレットで満足できるものをひとつも見たことがないのだ。私が読んだことのある記載は、以下の問題の少なくともひとつをはらんでいた。

  • 重み付けが間違っている: 定型神経発達の人が書いた自閉症の記述の多くは社会性についてばかり焦点を当てているものがとても多い。しばしば自閉症は完全に社会性にまつわるものとして書かれ、ほかの違いは、よしんば言及されたとしても、たまたま生じているものと考えられている。
  • あいまい: 「三つ組の障害」が悪の元凶。この言葉は社会的特性を勝手に「相互作用」「コミュニケーション」「想像力」にわけるが、このカテゴリーの間にはっきりとした境目なんてものは断じてない。これは意味がなく無益なわけ方で、説明を簡単にすることからはかけ離れていて、何の役にも立たない。ただ混乱を増すだけで。
  • 病気扱い: これはあまりにも広く行われていることで、わざわざ言ってもしかたのないことかもしれない。自閉症はほとんど普遍的に、障害、疾患、病気として説明され、自閉症の特性は症状や欠陥として説明される。このバイアスは不正確であるとともに有害である。
  • 限定的: 自閉症者は驚くほど多様である。そしてなお往々にして、この多様性は「スペクトラムの両端」とか「高機能かどうか」とか、アスペルガー症候群と古典的自閉症の対比として受け止められているに過ぎない。こうした形で自閉症者の間の多様性を表現しようとすることは些末な試みであるだけでなく、それ自体で積極的に有害なものである。

解決策

なので、自分で書くことにした。これは診断基準のセットではない。だって、どうやって自閉症を診断するか私は知らないんだから。これは自閉症の特性と自閉症者について、インクルーシブに、正確に、有用に、価値中立的に説明しようとする私の最大限の試みである。
以下に挙げることの多くは、正反対の例を取り上げている。たとえば、「Xが嫌いなことがある」と、「Xが好きなことがある」というように。これは手違いではなく、自閉症者がどれだけ多様でありうるかということを反映しているものである。自閉症者は様々な特性の正規分布グラフの端っこにいることが多いが、同じ側の端っことは限らない。このリストはインクルーシブなものにしようとして作ったので、どんな自閉症者もリストの特性をすべて持つことはない。それは不可能だ。だってこの中の多くはお互いに両立しないものなんだから!
自閉症を定義する最低限の基準ではなく、自閉症特性のとりうる範囲を最大限広く含めようとしたことこそが鍵である。あらゆる自閉症者が共通に持つものを示す代わりに(そんなことをしようとしてもどこにでもあるようなちっぽけで役に立たない説明にしかならないはず)、このリストでは自閉症者のなかで見出す大いなる多様性を示すことを意図した。

リストだよ

さて、前置きはこれまでとして、実際のリストにいってみよう。3つの大きなカテゴリー、「社会性」「感覚」「認知機能」にわかれている。この分け方は完璧なものではないけど、わけるとしたらこれが最善ではないかと思うし、リストをわかりやすくしてくれるはずだ。それぞれのカテゴリーは節(数字)と小節(アルファベット)からなり、小節はそれぞれの特性の例を含んでいる。

社会性

1.ボディーランゲージ・非言語コミュニケーションの違い
A.アイコンタクトの使い方の違い

  • 他の人よりもアイコンタクトをよく使うことも、あまり使わないこともある
  • 特定の状況でしかアイコンタクトを使わないことがある(例:親しい人とだけ、あるいは知らない人とだけ)
  • 他の人と違う方法で、あるいはちがう場面でアイコンタクトを使うことがある

B.声のトーンの使い方の違い

  • 他の人よりも声のトーンの使いわけの幅が少ないことや、声のトーンに意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人よりも声のトーンの使い分けの幅が多いことや、話す時に「歌うように話す」ことがある
  • 他の人よりも大きい声で話すことも、小さい声で話すこともある

C.ジェスチャー・ボディーランゲージの使い方の違い

  • 他の人よりもジェスチャーを使うことが少ないことがある
  • ボディーランゲージにコミュニケーションのための意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人と違う種類のボディーランゲージをコミュニケーションのための使うことがある
  • 他の人よりもよくジェスチャーを使うことがある

D.表情の使い方の違い

  • 他の人よりも表情の使い分けの幅が少ないことがある
  • 表情にコミュニケーションのための意味を持たせて使わないことがある
  • 他の人と違う種類の表情を使うことがある
  • 他の人よりも表現豊かな、大げさな表情を使うことがある

2.言語コミュニケーションの違い
A.文字通りのコミュニケーション・比喩を用いるコミュニケーションの使い方の違い

  • 文字通りの言葉遣いのみ使うことがある
  • 一般的でない種類の比喩やたとえを使うことがある
  • 使う言葉の精密さ・正確さに重きを置くことがある
  • 他の人と違う意味で言葉を使うことがある

B.発話の使い方の違い

  • ストレス下など特定の状況で話すのが難しいことがある
  • 口頭の言葉を全く使わないことがある
  • コミュニケーションのためにエコラリア(特定の言葉やフレーズを繰り返すこと)を使うことがある
  • 文字ベースのコミュニケーションを強く好んだり、口頭の言葉を使うことが難しいことがある
  • 口頭の言葉を強く好んだり、文字ベースのコミュニケーションを使うことが難しいことがある

3.やりとりや関係性の違い
A.関係性についての欲求の違い

  • 社会的関係性をあまり、あるいはまったく望まなかったり必要としなかったりすることがある
  • 特定の種類の関係性を望み、他の種類は望まないことがある
  • ダイナミックな、社会的な規範にあまり縛られない、一般的でない形の関係性を築くことがある
  • 関係性を繋ぐのに際して社会的規範やルールに強く依存することがある

B.集団の好みの違い

  • 一対一のやりとりを必要として、大きな集団では苦労することがある
  • 大きな集団でのやりとりを必要として、一対一では苦労することがある
  • 大きな集団でのやり取りで、構造やルールを多く必要とすることがある
  • 相互のやりとりよりも、大勢に向けて発表することのほうが簡単なことがある

C.やりとりの好みの違い

  • 実用的・実際的なやりとりを好んだり、焦点の定まらないやりとりが難しいことがある
  • 他の活動や情報入力と同時にやりとりに意識を向けることができないことがある
  • 同時並行なやりとりを好んだり、直球的なやりとりが難しいことがある

D.他の人との社会本能の違い

  • 他の人、特に非自閉症者とのコミュニケーションに困ることがある
  • 関係性を築くために、他の自閉症者に惹きつけられることがある
  • 他の人から社会的につまはじきにされていることがある
  • 他の文化の一員のように感じることがある
感覚

1.感覚の敏感さの違い
A.ある種の感覚や特定の感覚刺激への感受性の強さ(例:まぶしい光、ある種の質感、強い匂い、うるさい音)

  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に苦痛を覚えることがある
  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に気持ち悪くなったりしんどくなったりすることがある
  • 他の人がそれほど反応しない感覚刺激に落ち着かず、避けたり逃げたりしたくなることがある

B.ある種の感覚や特定の感覚刺激への感受性の弱さ(例:痛み、温度、味)

  • 他の人がふつう反応する感覚刺激に気づかないことがある
  • 他の人がふつう弁別できる感覚刺激を弁別できないことがある
  • ある種の感覚刺激について、他の人がふつう必要とするよりも強い入力を必要とすることがある

C.ある種の感覚や特定の感覚刺激についてちょうどよく感じる範囲が狭い

  • 刺激のちょうどよい強さを探るのに苦労することがある
  • ある種の感覚刺激についてすぐに敏感・鈍感になりやすいことがある
  • 刺激入力についてとても独特な形や強さを必要とすることがある

2.特定の種類の感覚入力への強い喜び・欲求・必要性(自己刺激行動にあらわれる)
A.視覚自己刺激

  • ある種の光、模様、形、色を見つめることがある
  • ある種の動くもの、光の変化、光のまたたきを見つめることがある

B.圧覚自己刺激

  • 重いものを載せて自分に圧力をかけることがある
  • 体重が圧力としてかかるような姿勢で座ったり横になったりすることがある

C.前庭覚自己刺激

  • 体を前後に揺らしたり回ったりするようなある種の動き方をすることがある
  • 体を大きく揺らしたり、すばやく加速させたりするなどの動きを伴う活動をしたがることがある

D.固有受容覚自己刺激

  • 手をパタパタさせたり、手をヒラヒラさせたり、髪をクルクルしたりというような特定の方法で体を動かすことがある
  • 物や周りのものを触ったり掴んだりすることがある

E.触覚自己刺激

  • 特有の物や質感の感触に惹かれることがある
  • 手や顔などの体の部位を物でなでたりこすったりすることがある

F.聴覚自己刺激

  • 口、声、体を使って特有の音をたてることがある
  • 物を使って特有の音をたてることがある

G.その他の自己刺激

  • 特定の匂い、味、その他の感覚刺激に強く惹かれることがある
  • 特有の強烈な感覚的経験(例:辛い食べ物)に強く惹かれることがある
  • 複数の異なる種類の感覚刺激を組み合わせる形で自己刺激をすることがある

3.感覚情報処理のその他の違い
A.複数の、組み合わさった感覚刺激の処理の仕方の違い

  • 体験した感覚を個々の部分に分解するのが難しいことがある
  • 個々の部分をひとつの感覚体験に総合するのが難しいことがある

B.感覚調整の難しさ

  • 関係のある刺激に注意を向けるのが難しいことがある
  • 関係のない刺激から注意を逸らすのが難しいことがある
  • 一度に少ない感覚情報入力しかない統制された環境を必要とすることがある
  • その他の情報処理における特定の違いや難しさ
  • 口頭で話されたことを理解したり解釈したりするのが難しいことがある(聴覚情報処理障害)
  • 異なる感覚を混ぜたり一体化したりすることがある(共感覚
認知機能

1.集中力・堅固さの強さ
A.焦点化・関心の強さ

  • 特定の少ない関心事に集中することに多くの時間を費やすことがある
  • ある種のテーマ・活動に長期間にわたって傾注することがある
  • 関心のあるテーマに強い感情的な結びつきを持つことがある
  • 関心のあるテーマについて詳細なプロ級の知識を持つことがある

B.決まった手順や同じであることを好む

  • 日課、週課、なんらかの活動などに特定の決まった手順があることがある
  • 決まった手順や計画が妨げられた時に落ち着かなくなったり当惑したりすることがある
  • 事前に伸長に計画をする必要があることがある
  • 新しい、なれない状況に置かれることについて他の人よりも不安が強いことがある

2.認知機能の違い
A.実行機能の違い

  • ひとつかそれ以上の記憶のタイプ(例:短期記憶、長期記憶)について特に強みとしていることや弱みとしていることがある
  • 一連の段階や行動を計画したり実行したりするのが難しいことがある
  • 問題を見つけたり解決したりするのが難しいことがある
  • 関係のある情報や感覚入力に集中するのが難しいことがある
  • 行動を始めたり、終えたり、切り替えたりするのが難しいことがある
  • 衝動性のコントロールが苦手なことがある
  • 時間の感覚が弱いことがある

B.感情を体験したり処理したりすることの違い

  • 物理的な感覚を感情と取り違えたり、その逆に勘定を物理的な感覚と取り違えることがある
  • 感情を特定したり名付けたりするのが難しいことがある(アレキシサイミア)
  • 他の人の感情を認識したり理解したりするのが難しいことがある
  • 他の人の感情を意図せず体験することがある

C.認知機能の幅の違い

  • 他の人よりも処理速度が低いことがある
  • 特定の領域(例:非言語的推論、言語、音楽、数学)について極めて強みとしていることがある
  • 顔を認識しにくいことがある(相貌失認)
  • 他の人よりも時が経つ中で能力が変わりやすい

3.思考様式の違い
A.細部へのアプローチの違い

  • 総体的な「全体像」よりも先に、あるいはその代わりに、細部を意識する傾向を強く持つことがある
  • 細部よりも先に、あるいはその代わりに、総体的な「全体像」を意識する傾向を強く持つことがある
  • 一般論から具体例を導き出すのが難しいことがある
  • 具体例から一般化するのが難しいことがある

B.規則性や体系へのアプローチの違い

  • 規則性を認識することに長けていることがある
  • 小さな細部や間違いを見つけることに長けていることがある
  • 数学、科学、パズル、言語などの科目を体系的に理解することに長けていることがある
  • 情報や物を整理したり整列させたりするのが楽しいことがある

C.情報処理や意思決定のやり方の違い

  • 「白か黒か」思考や極端な論理になる傾向をもつことがある
  • 特有の考え方(例:論理的、感情的)への強い好みを持つことがある
  • 「型破り」な考え方をしているように見えたり、他の人と異なる方法で結論にたどり着いているように見えることがある

1.特性の幅
A.長期的な幅

  • 幼児期から成人期へ発達するなかで変化することがある
  • 成人期の間に年月を経て変化することがある

B.環境

  • ストレスが掛かっていたり気分がわるかったり疲れたりしているときに、過負荷に敏感なことがある
  • 社会的状況により異なる社会的行動をとることがある

2.あらわれ方の幅
A.意識的な幅

  • ある種の状況で意図的に特性を隠すことがある
  • 本能を置き換えるために身に着けたやり方を用いることがある

B.無意識的な幅

  • 幼児期から特性の隠し方を身に着けていることがある
  • 特性のあらわれ方に影響するトラウマ体験や精神疾患を抱えていることがある

このリストを使ってね

三つ組の障害とかほかの欠陥のある要約の代わりに、みんながこのリストや、これに基づいた記載を使ってくれたらとてもうれしい。何かで使うなら、ちゃんとこの記事が元だとわかるようにしてね。でもまぁそれよりも、誰もが自閉症のよりよい説明を読めることのほうが本当は大事だけどね。